Manchester City × Liverpool
"Today we did it all wrong - the performance, the way we defended, the way we went forward. It was a fake night, a fake game. It is difficult to understand.
「理解に苦しむ。」「今夜は本当の我々ではない。」
敗戦の将、マヌエル・ペジェグリーニは試合後、BBCのインタビューにこう残した。
試合中も冷静を保ち、感情を表に出さないことで知られるチリ人監督はインタビューの最中、酷く動揺していた。
この試合で彼に何が起こったのか。
例えるなら「氷と炎」
そんな対称的なキャラクターを持つ両監督に焦点を当てた一節を。
*Starting Eleven
マンチェスター・シティはダビド・シルバ、コンパニが欠場。
インターナショナルウィーク明け、後のCLを控えていることもありフェルナンジーニョ、オタメンディはベンチスタート。
リバプールはヘンダーソン、サコー、イングス、ゴメスが欠場。
サコーの代わりに起用されたロブレンがどう働くのか注目です。
*前半
試合の様相としてはホームのシティが60%近くボールを保持する展開に。
対するリバプールはボールを保持することを半ば放棄。
両者、思惑が合致した前半となります。
*リバプールのプレッシングとシティのビルドアップ
後方から細かく繋ぐことで攻撃のリズムを作りたいシティ。
それを阻むように明確な狙いを持ってプレスをかけるリバプール。
リバプールがボールの狩り所に設定したのは「両SB」。
そして「ジョーハート」でした。
局面は左から右に攻めるシティ。
CBからワイドに位置を取るSBヘボールを展開。
リバプールは右インサイドハーフ(ミルナー)が対応し、2シャドー、トップのフィルミーノもこれに連動し近いパスコースから潰していく。
またアンカー(ルーカス)と左インサイドハーフ(チャン)もしっかりと連動スライドし、密度を上げる。
この時、ゴールに背を向けパスを受けるスターリングに対し、クラインが素早い寄せを行いボールを回収。
テンプレート化しつつあるリバプールのプレッシングですね。
左から右へ攻めるシティ。
ハートのゴールキックを受けたサニャへ強く寄せるコウチーニョ。
足下の技術に不安を抱えるサニャへのフォローは無くサイドで孤立。
ここで3対3のショートカウンターが発動。
ボールを奪われたサニャ、激おこです。
右手を上げ審判と味方に憤怒してます。怖いです。
以上、「両SBから狩る」で機能するリバプールのプレッシングでした。
そしてジョーハートはキックが酷かった。
元々良いキックを持った選手ではないと思ってはいたのですが、この日は本当に稚拙。
ハートの話はまた後述。
*リバプールの攻撃とシティが抱える問題
ではリバプールの攻撃はどうだったのか。
ただ、その前にシティの問題点について少し触れます。
シティはCLのセビージャ戦あたりから4-1-4-1を採用してます。
このリバプール戦は4-4-2なんですけどね。
そして、どちらにも共通するのですが「ヘスス・ナバスの位置が異常に低いんです」
CLのセビージャ戦。
まだ陣形に馴れてないのか、ペジェグリーニの指示なのか、ワザと空けているのか。
意図がわかりませんが位置が低いです。
これはリバプール戦でも顕著に現れていました。
局面は右から左へ攻めるリバプール
この白丸がヘスス・ナバスです。明らかにおかしいです。
中央からパスを呼び、次の展開を練るチャン。
それでこうなります。
ノープレッシャーでボール運べちゃいます。
5バックになっちゃいます。
それでコレ、恐らくクロップは試合前からわかってました。
ズバリ、リバプールの狙いは左サイド。
もっと言うとマンガラです。
右から左に攻めるリバプール
さっきの画像の続きです。
この折り返しをマンガラが左足で丁寧に流し込み、全世界を驚愕させるんですけども、経緯を細かく見ていくと更に驚愕します。
横から見るとこうです。
一人一人を見ていきましょう。
コウチーニョ:相手の最終ラインと抜け出すフィルミーノを同時に見ながらスルーパスが出せる状況。(ノープレッシャー)
フィルミーノ:出し手のコウチーニョと目の前のデミチェリスを同時に見ながら裏へ抜け出せるので絶対にオフサイドにはならない状況。
圧倒的にリバプールが有利な状況。
しかし、この時マンガラもコラロフも優雅にジョグで戻り、カバーの効かないポジショニング(水色)を露呈。
特に酷いのがマンガラで フィルミーノが抜け出した際、両足を止めて右手を上げてるんですよね。
もしかして・・・マンガラ・・・おまえ・・・
この状況でオフサイドを取りにいったのか・・・?
これはクレイジー極まりないです。
この人の前でこんなことをしでかしたら、袖口のワルサーP38で脳天を打ち抜かれセーヌ川にドボンです。
ここからはマンガラの公開処刑とジョーハートのシュート練習が全世界に公開です。
ユルゲン・クロップは人の良さそうなオヤジって感じが滲み出てますけど本当にエッグいです。弱点を執拗に攻めます。
この日、リバプールがやってたことって実は物凄く単純でして、ポジショニングセンスとカバーリング能力に難のあるマンガラのエリアにダイアゴナルランを仕掛け続けるだけなんです。
右から左に攻めるリバプール
こういうフリーランでCB間の距離を広げて突っ込ませたりとか。
フィルミーノをマンガラに食いつかせて
広がったCB間をミルナーに突っ込ませたり。
これは開始10秒たらずのシーン。
コウチーニョのスルーパスが微妙に合わず、なんとか失点を免れるシティ。
低い位置ならともかく、こうも簡単にバイタルエリアでコウチーニョに前を向かせるなんて、どうかしているとしか思えず、前監督ロベルト・マンチーニが血の涙を流すであろう一幕。
この守備のザルっぷりといいユニフォームの色といい川崎フロン◯ーレか!?
と思わず見る側を錯覚させてしまう1シーンである。
これは2点目のシーンなんですけど
フィルミーノのスルーパスに抜け出したコウチーニョの一閃で勝負ありです。
ただこれもマンガラの怠惰ジョグ戻りが原因でして。
全力ダッシュで白丸まで戻りフィルミーノとコウチーニョのどちらも。
せめてフィルミーノだけでも視野に入れておけば、わからなかったかもしれない。
スピード、パワーは本当に優れている選手なので、その辺をもうちょっと。
カバーリングの理想図はこうなんですよ。
アッレグリ伯爵の芸術作ですよね、これ。美しい。
マンガラはエンマサ氏と8週間くらいレオパレ◯で一緒に暮らせば、めちゃめちゃ良い選手になりそうですね。幽閉しましょう。
ただカウンターの正確な対応って凄く難しいのである程度はしょうがないです。リバプールの溢れんばかり流動性アタックがヘビーでワイルドでグレートな出来だったのもペジェグリーニの計算外だったのでしょう。
それでもさすがにやられ過ぎです。
ただ、シティはカウンター以外の守備も良くないのです。
右から左に攻めるリバプール
ドリブルの上手いロブレンはルックアップしながら前進。
デ・ブライネが寄せるも味方のプレス連動は皆無な状況。
ロブレンは1列飛ばした素晴らしいクサビ(左足で!)を打ち込み、コウチーニョはサニャを食いつかせ、パスを受ける。
シティの守備ブロック全体を中に絞らせ、SB不在の大外へ展開。
ハート「また、この展開かよ」(激怒)
前述した「ヘスス・ナバス問題」もあり、たった3本のパスでこの展開。
この状況になったら、もはや
状態です。
センキューなっち!フォーエバーなっち!
*シティの爪と前任者の陰
とは言うものの、マンチェスター・シティは攻撃的なスタイルでプレミアリーグを圧巻してきたチームです。
そもそも流動性溢れるアタックとCB–SB間を攻める攻撃はウチの得意分野だ!と息巻くシティのファンも多く居るでしょう。
何点取られようが相手より多く取れば良い。
ポゼッション星人の常套句です。
・・・しかし今日のシティにはあの男が居ません。
左から右に攻めるシティ
受け手を捕まえるようなリバプールのプレッシング。
パスコースはGKへのバックパスしかありません。
ここでトップ下のデ・ブライネが中盤に顔を出すことでクッション役に。
中を経由して外のサニャへ。
しかし、デ・ブライネが下りてきた事により間受けが消失。
パスコースがナバスへの1本しか無いのでモレノは強く寄せ、ボールを回収。
この男が左サイドに居てくれたら、間違いなく黄丸まで絞ってアグエロとの華麗なコンビネーションを見せてくれたでしょう。
シルバの穴はあまりの大きかった。
悲しいかな、ダークサイドに墜ちたラヒーム・スターリングにシルバの代役は不可能。
というか、シルバの代役なんて世界中を探しても居ないんですけどね。
ただ、牙は無くとも爪がある。
デ・ブライネという爪を向けるペジェグリーニ。
左から右に攻めるシティ
サニャのパスに反応し、裏へ抜けるデ・ブライネ。
ロブレンの裏を突かれる非常に危険な場面。
ここでのカバーは古巣相手に燃える。漢ミルナー。
デ・ブライネの折り返しはミルナーが間一髪でカット。
この開いたCB-CB間、SB-CB間はインサイドハーフ、アンカーが埋める仕組みが徹底されていました。
これは前任者ブレンダン・ロジャーズが残した遺産です。涙が出ますな。
この場面も。
SB-CB間をミルナーが埋めます。
黄金パターンが封じられ、リバプールの執拗なプレッシングに苦しみ、頼みのアグエロにはボールを供給出来ずでシティは超絶に酷い内容だったのですが、ワンチャンスを物にします。
シュクルテルのクソみたいなクリアミスを拾ったセルヒオ・隙あらばゴラッソ・アグエロが突撃ドリブル、ルーカスのチェックを無理矢理剥がしタイガーショットを発砲。
「ひとりでできるもん」(人外編)を披露。
あまりに理不尽すぎる得点に笑うしか無い我々。
WADAは可及的速やかにアグエロを調査してほしい限りである。
やりたいことが出来なかったシティ。
両チーム、明暗がハッキリ分かれた前半でした。
*後半
後半の頭から
ファビアン・デルフとフェルナンジーニョを投入。
65分にアグエロ@とっととリーガに行ってくれを下げ、イへアナチョを投入。
これといった見せ場も無く(リバプールの決定機以外)
最後に
シュクルテルが祝砲をブチ込んで、4−1
(ヴァーディーかな?)
4−1でリバプール。圧勝です。終了。
あの・・・
後半、書く事無いです(爆)
だってね、ペジェグリーニがプランを変更するとかまじで何も無くて、ただただ選手が変わっただけなんですよ(笑)
やってることは前半と同じで、強いて言えばデルフとフェルナンジーニョが守備を頑張ってたくらいのもんでして・・・攻め筋の変更も無し。
しかもアグエロの交代って、事実上の白旗宣言ですやん。。。
シュートを止めるハートを見てるだけの後半でした。
この試合、リバプールのプランは
①積極的なプレッシング
→高い位置で奪った場合、即カウンター
→奪えなかった場合、自陣に撤退し、守備ブロックを形成→②へ
②自陣でのリトリート
→比較的高い位置で奪えた場合、そのままカウンター。
→低い位置で奪った場合、無理に繋がずに相手のSB裏(特に左)へ蹴り込む
この試合のリバプールが素晴らしかったのはここの判断がとても正確だった点です。
無理に繋いでカウンターは避けたいので、大きく蹴り出します。
またこの時に重要なのが
マイボールになろうが相手ボールだろうが
ラインを出ようが出まいが関係ないんです。
マイボールなら上がってくる味方がマンガラ付近を攻め込みますし、相手にボールを拾われたら全体のラインを押し上げてプレッシング開始です。
仮にゴールキックになってもラインを押し上げて、再びプレッシングが開始できるのです。
これがテア・シュテーゲンとかだと絶対に避けたいのですが、ジョーハートのキックは本当にク◯なのでこのプランが成り立つって話です。
ただ、セービングは超一流なのでシティサポーターは足を向けて寝られません。
この日も4点くらい防いでました。あっぱれです。
最後に、リバプールの弱点が出たシーンがあったのでやっておきます。
左から右に攻めるシティ
ボールホルダーはコラロフ。
本来、シャドーのララーナかインサイドハーフのミルナーがプレッシャーをかけなければならないシーン。
ですがリバプールはプレッシングから自陣でのリトリートに切り替えているので、瞬間的にフリーで前を向けるコラロフ。
ここで高精度のサイドチェンジ。
密度を上げ、スペースに圧力をかけるクロップのプレッシングは「逆サイドの一番遠いスペース」が一番のウィークポイントなんですよね。
後衛がラインを整え、万全の状態になってから前衛は引くべきだったんですが、意識の齟齬が発生し、ピンチを招いたシーン。
最前線、いわゆるファーストディフェンダー(フィルミーノ)が常に後方を確認し、リトリートするタイミングを決定しなければいけない。
まだクロップの就任から日も浅く、慣れないポジションで起用されたフィルミーノにそれを求めるのは酷かもしれませんが、今後CLを見据えて戦うのであれば、常に完璧を目指さなければいけませんね。
コラロフの好プレーから学ぶ守備の掟でした。
*感想
プランを練りに練ったクロップ。
対称にそれを感じさせなかったペジェグリーニ。
単純にインターナショナルウィークでリバプール側に残ってた選手が多かったって事が勝因として大きいような気がしますね(コウチーニョとフィルミーノがベンチにすら座れない国があるそうですが・・・)
僕はマンチェスターシティもペジェグリーニも嫌いではないので、CLも精一杯頑張ってほしいです(小学生並の感想)
ただ昨年のバルセロナ戦では無策としか形容できない4-4-2で爆死した印象が余りに強くて、欧州の戴冠を狙うのならばペジェグリーニでは厳しいような気もします。
契約延長したにも関わらず、ペップ・グアルディオラやカルロ・アンチェロッティ招聘の噂が相変わらず絶えません。
あと4-4-2は諦めた方が良さそうだぞ。
*おまけ
右から左へ攻めるシティ
ルーカスのチェックを剥がし、バイタルエリアへ進撃するデルフとその仲間達。
デルフ「ヒャッハー!!!」
仲間達「村だ!村だー!!!!!!」
(イメージ図)
デルフ「・・・?」
ロブレン ↓
おわり。