Juventus × Bayern Munchen
皆様、明けましておめでとうございます。
昨年勢いで始めたブログもなんとか続いております!
毎日来てくださいなんて言いませんので、暇な時はまぁ見てやるか、ぐらいのノリで遊びにきてください。
言うなれば都合のいい女的なノリでね。
飲み会の帰りに連絡してみようかなー的な。
でも自宅には絶対呼びませんよー的な。
買い物中「あいつ、そういえばヴィヴィアンウエストウッド好きだったなぁ」
みたいな感じで、ふとした時に思い出してもらえる様なブログでありたいものです。
本年もよろしくおねがいします。
ということで早速、新年1発目を。
Juventus × Bayern Munchen
バルセロナとミランを率い、世界中の注目と賞賛を浴び続けたペップ・グアルディオラとマッシミリアーノ・アッレグリ。
指揮するチームは変わったものの、フットボールの戦術史に名前を刻むであろう両雄が再び欧州の舞台で相見えることとなり、世界50億人の歓声が聞こえてきそうなカードをピックアップ。
ではスターティングイレブンから。
Starting Eleven
◇Juventus
ホームにドイツの皇帝を迎え入れるセリエAの覇王。
昨季からマッシミリアーノ・アッレグリを招聘し、CLのファイナルへ堂々進出。
新戦力にはパレルモの超新星パウロ・ディバラ、クロアチアの火薬庫マリオ・マンジュキッチ、プロサッカー選手サミ・ケディラを補強し、大黒柱ポール・ポグバを10番に据えた新生ユベントス。
チームの基盤であったアンドレア・ピルロ、カルロス・テベス、アルトゥーロ・ヴィダルらが抜け、開幕2連敗スタートで超大波乱の今シーズンかと思いきや、27節終了の時点で単独首位の椅子にドッカリと鎮座しているあたり流石の出来。
怪我人も発生し、キエッリーニやカセレス等が使えないのが痛手だが、ミラン時代を鑑みるにこの程度のスカッド事情ごとき、大きな問題に感じない所がアッレグリのアッレグリたる所以である。
◆Bayern Munchen
偉大なる前任者ユップ・ハインケスの後任としてバイエルンミュンヘンでの3年目を迎えたペップ・グアルディオラ。
また今シーズンをもってバイエルンでの監督職を退任し、来季からはマンチェスターシティで指揮を執ることを正式に発表した。
2連覇中のブンデスリーガでは今季も絶好調のフライトを続け、悲願の3連覇をたぐり寄せる圧巻の横綱フットボールを魅せる一方、2年連続ベスト4で沈んでいるCLに関して本人、ファン、フロントも全く納得していない模様。
今節はCB起用の21歳キミッヒとアンカーのビダルに注目。
勝つ事でこの苦境を乗り越えたい。チームの眼差しは欧州の戴冠のみ。
求道者グアルディオラはミュンヘンの歴史に名を刻めるだろうか。
と、試合に入る前にバルセロナでのグアルディオラを軽くを振り返ってみましょう。
バルセロナで2度欧州を制覇し、リーガエスパニョーラを幾度となく勝ち抜き、栄華を極めたペップ・グアルディオラ。
ピッチ内ではレアルマドリーのジョゼ・モウリーニョをはじめとするリーガの強豪、CLでは国外の強者と厳しい競争を強いられ、心身ともに疲弊。
ピッチ外では選手との軋轢もあり、2012年にバルセロナを退任した。
精神的、肉体的に枯渇したグアルディオラはニューヨークでの静養を経て、翌シーズンにバイエルンミュンヘンの監督に就任。
現在のバイエルンと比較する為に 、当時のバルセロナを少し振り返ります。
*メッシのための10人
懐かしのバルセロナ。ここで注目したいポイントは2つ。
① CFビジャはCBの裏を狙い続け、相手の最終ラインを引き下げる。
② 左WG、ダニ・アウベスはワイドに張る事でゾーンを横に引っ張る。
ペップの目論見としてCBの裏に浮き球のパスを通す為にビジャを動かせ続けている訳ではないし、ワイドに広がる選手達にサイドから上質なクロスを要求しているという事でもない。
率直に言うと、バイタルエリアを広げる駒になってほしいのである。
また攻撃的な位置に張り続けるダニ・アウベスに対し
左SBアビダルは最終ラインに残り、敵のカウンターに備える。
こう書くと物凄く聞こえは良いが、裏返して言うと
アンカー(ブスケッツ)をメッシの近くに置きたい為に逆算された方法論だ。
このチームの目標はただ1つ。
DF-MF間(バイタルエリア)で待つメッシに良い状態でボールを届ける。
これだけ。本当にこれだけである。
常にボールを持つ事で守備の回数を減らし、ボールを失うと高速の攻→守の切り替えプレス(ネガティブトランジション)でボールを迅速に回収し、波状的な攻撃に繋げ、最も安全な状態でメッシに渡す。
当時、潔癖性とも揶揄されたバルセロナフットボールの正体である。
ペップ・グアルディオラ「僕たちの義務は、あの子に1番良い状況でボールを渡す事だ。その後は座って何が起きるのかを見ていれば良い
『知られざるペップ・グアルディオラ』より
前置きが長くなりましたが、試合に入ります。
*前半
両チームとも、試合開始直後から非常に強度の高いプレッシングを見せる。
自国リーグでは常にボールを保持している両者であり、この試合でもボールを保持しつつ時間を進めたい両監督の思惑がぶつかり合う形に。
普段ならば丁寧にショートパスを繋いでゲームを作っていく両チームであるが、激しいプレスを真正面から受けるのは得策ではないと考えたのか、難しい局面では無理せずロングボールを蹴り込むシーンも散見された。
ここでのボール保持権を分けたものはネガティブトランジション。
ボールを失った瞬間から、選手全員でボールホルダーにプレッシングを開始するバイエルンと帰陣を最優先とし、守備ブロックの形成の意識が高かったユベントス。
結果、長い時間ボールを保持し試合を進めるのはバイエルンだった。
ユベントスのアッレグリもカウンターによる失点だけは避けたい(アウェーゴールを執られたくない)為、試合の早い段階でボール保持を諦め、自陣でのリトリートを優先することに切り替えているよう状況が目に映った。
と同時に「自陣で構えている状況なら守り抜ける」と言った絶対的自信が裏付けされているようにも見えました。
*ユベントスの守備ブロック
ユベントスは自陣で4-4-2の3ラインを形成。
主にハーフコートから守備を始めていました。
アッレグリが最も警戒すべき選手に定めたのは両インサイドハーフのミュラーとチアゴ・アルカンタラの2名。
1列目のディバラ、マンジュキッチはボールにプレッシャーを与え続ける。
2,3列目はインサイドハーフを消すため中央を圧縮し、コンパクトな4-4ブロックを構築。
必然的にロッベン、コスタの両WGがフリーになるが、どうしていくのか。
*ボール保持時のバイエルン
(ミュラーとチアゴは逆でしたね。)
両WGはタッチライン際にポジショニングをすることで相手のゾーンを横に広げ、攻撃の横幅を作る(バルセロナ時代と同様)
相手の1列目は2枚なのでヴィダルをCB間にポジショニングさせることで3対2の数的有利のまま試合を運んでいく。
また特筆すべきはラーム、ベルナト両SBの中央への絞り。
グアルディオラバイエルンではすっかりお馴染みとなったファルソ・ラテラル(偽のサイドバック)と称されるものですね。
両SBを中央へ絞らせる理由として、おそらく3つ
①ドウグラス・コスタとロッベンの両WGは縦に突破してクロス、中央へのカットインと各々単独でも相当な破壊力があるため、敢えてラーム、ベルナトの両SBをサポートに向かわせず中盤に厚みを出す。
②(フリーロール的に動く事もあるが)主に中央にポジションングする事で相手の守備ブロックを中に圧縮させ、両WGへのプレッシャーを弱くさせたい。
③は後述。
外郭からも中央から攻め立てられるよう設計されたミュンヘンの戦士達はトリノの城を破壊できるのか。
局面は右から左に攻めるバイエルン
2トップの脇でボールを受けるベルナト。
ユベントスの2列目はしっかり中に絞っているので、ここはシンプルに外のドウグラス・コスタへ展開。
ベルナトがドウグラス・コスタに展開した瞬間、一気に寄せるリヒトシュタイナーと脇でカバーに備えるクアドラード。
さすがのコスタでもこの局面から縦への突破は難しく、カウンターを喰らうリスクが高いので、一端ボールを下げ、逆サイドに展開すると
逆サイドでも同様にエブラがチャレンジし、ポグバがカバーする。
この日、ユベントスの守備鉄則はWGに渡った瞬間、SBが前に出てSHがしっかりカバーし、守備ブロック全体も横へスライド、徹底したサイド攻撃を封殺する構え。
図にするとこのようなサイド対応に。
ユベントスが敢えて空けているようにも見えるが、バイエルンが狙うのはSB裏のスペース。
SB裏スペース略奪戦の火蓋は切って落とされた。
局面は右から左へ攻めるバイエルン
底からパスを受け取ったドウグラス・コスタ。
前に飛び出すリヒトシュタイナーと横に備えるのはクアドラード。
中盤から空いたSB裏のスペース(赤丸)を狙うのはベルナト。
ドウグラスコスタはリヒトシュタイナーの裏にベルナトを走らせるパス。
が、「知ってる」と言わんばかりにボヌッチがカバーしサイドにクリア。
「中→外フリーランニング」はCBの横スライドにアッサリと処理され、失敗。
縦突破には厳戒態勢を敷くユベントス。
縦がダメなら・・・と、中に「カットイン」してみると
くりぃむしちゅー上田「これロッキーの撮影じゃないのよー」
圧縮しすぎワロタwwwwwwww5人てwwww
ユベントスの新宿駅ディフェンスで中央へのカットインの選択肢も削られるバイエルン。次の選択肢を持ち出す。
右から左に攻めるバイエルン。
ボールを持つのはアラバ。
CHケディラとSHクアドラードは距離をグッと縮めてボールをサイドに誘導する。
ここからユベントス選手の手に注目。
中へのパスコースを消しているケディラとクアドラード、2人が手で指示しているのはコスタの位置と外から追い越すベルナト。
ドリブルを始めるコスタと追い越すベルナトのコンビネーションプレーで左サイドを崩しにかかるバイエルン。
しかしここでSBリヒトシュタイナー、SHクアドラードは互いに手を使いあってマークの受け渡しを敢行。
ボールを持つコスタにはクアドラードが。
追い越したベルナトにはリヒトシュタイナーがマークする事でフリーを作らせない守備のコンビネーションプレー。
バイエルンはこの場面もクロスを送る(送らされた)形で攻撃を終える。
半ば強制的に蹴らされた精度の低いクロスでは、かのレバンドフスキ大明神でもほとんどノーチャンスというものである。
と言う訳で「外→外フリーランニング」は守備側の手を使ったコンビネーションプレーで対処するユベントス。
合法的に手を使う事で、味方への適切なポジショニングの指示、マークの受け渡し、失点の可能性が1番低い選択肢を選ばせたユベントスの完成度はセリエAの積み重ねられた守備史とアッレグリ監督の確かな手腕を感じてしまいますね。
ちなみにグレートブリテン島における「手を使った守備」と言うと・・・
こうなります。
( ※画像はイメージです)
バリエーション豊富なサイド攻撃を見せるペップバイエルンと
こういった組織単位で拮抗した試合を動かすのはやはり傑出した個なのである。
局面は右から左に攻めるバイエルン。
右サイドでボールを受け取るロッベンに対し、前に出るSBエブラ。
ロッベンは一度CBキミッヒにボールを下げ、ドリブルで少し前進した後に、前に出たエブラの裏へ丁寧なインサイドキックで縦パスを入れるキミッヒ。
逆サイドでも見た「中→外フリーランニング」の形だが、先ほどとは違うのは
・キミッヒを使った3人目が絡む攻撃であること
・ボールを受け取るのがベルナトでなくラームであること。
先刻の対応と同様に横スライドでラームに寄せるバルザーリ。
しかし、3人目を使ったので時間的にも余裕があるラームはパスを受ける前にバルザーリを目視しており、フリック(ダイレクトパス)でバルザーリの鼻先でチェックを外し、中のレバンドフスキに繋げ
この展開を作った。
名手ミュラーがまさかのミス、なんとか失点を逃れたユベントス。
この日アッレグリ監督が計算外だった事は規格外のSBラームの存在とそのタスクだろう。
*SBを絞らせる3つ目の意味
前述した通り、ラーム、ベルナトの両SBは攻撃時、中央に絞ってボランチ化する。
偽りのSB、仕事の3つ目を見ていきたい。
右から左に攻めるバイエルン。
深い位置まで押し込みボールを持つのはロッベン。
対峙するのはエブラ。非常に危険な場面なのでマンジュキッチが魂のフォロー。
中を切り続けたエブラと下がったマンジュキッチで挟み込み、ボール奪取に成功。
ここは手早くカウンターに繋げたいユベントス。
が、ここでファルソ・ラテラル(ラーム)が現れ、サイドに蓋をする。
確かにセオリー通りにSBが最終ラインに残っていれば、被カウンター要員は増やせる。
しかしペップ・グアルディオラ。それはしない。
この男が攻撃だけを考えている訳が無い。
バイエルンは攻撃時、選手の仕事は固定されていない。たぶん。
・CBとのライン駆け引き→レバンドフスキ
・相手の守備ブロックを横に広げる→ロッベン、ドウグラスコスタ
・相手の守備ブロックの中で違いを作る→ベルナト、ラーム、チアゴ、ミュラー
と基本的にはこうなっているのだけど、タスクを全員で共有していれば良い的な。
例えばワイドのコスタが中に侵入すると、代わりにベルナトがワイドに張る。
レバンドフスキが低い位置まで下がると、ミュラーがCBとの駆け引きを行う。
全員がポジションを変え、ピッチにバランスよく配置できればボールを失っても、即座にボールマンを囲い込む事でカウンターの芽を刈り取る。
ペップバイエルンでは基本的にWGとSBが同じレーンにポジションを取らない。
(名前がリバプールの選手達になってて申し訳ないです)
同レーンに位置を取ってコンビネーションプレーを行うと、攻撃に厚みは出るし、美しいアタックになるがカウンターに沈んでしまう可能性が高くなってしまう。そのためバイエルンの選手達はすぐさまボールにプレッシャーをかけられるポジショニングを恒常的に取る(それと同時に安全なパスコースを作り続ける)
ペップはブンデスリーガの事を"カウンターリーグ"と称し、その脅威を存分に語っている。カウンターリーグでの火の粉を払うため、考えられた策であろう。
バルセロナではボールを失った直後の奪い返すプレスが6秒間、義務付けられていたが、バイエルンでは4秒間とされている。その理由としてはWGのロッベンやリベリーが守備に奔走し、攻撃で違いを作れなくなってしまう事を避けるためである。
その為、グアルディオラは中央突破の駒、流動性を生み出す攻撃のフリーマンとしての役割だけでなく、高い位置で可及的速やかにボールマンにプレッシャーを与え、ボールを奪取し波状的な攻撃に繋げる役。
仮に奪いきれない状況でもボールのベクトルを横、後ろにさせる事でカウンターを防ぐフィルターという非常に重要なタスクをSBに担わせる。
(バルセロナ時代、メッシに過剰な守備を課した事でチームを瓦解させてしまった自分自身の反省でもあったり??)
バイエルンでも小気味の良いパス交換や華麗なコンビネーションプレーばかりが注目されてしまうが、かつてドルトムントで指揮をとったユルゲン・クロップが世界を震撼させたゲーゲンプレッシングの着想元、高速のネガティブトランジションこそがペップ・グアルディオラの真骨頂なのである。
ユップ・ハインケス時代、最強の武器だったダイナミックなサイドアタックに欠かせないSBをこうも異端的な使い方をしてしまうのだから、このスペイン人には驚かされてばかり。
左から右に攻めるユベントス
ミュラーからボールを奪ったポグバ。
深い場所だがカウンターを仕掛けたいユベントス。
しかし、再びラームがポグバへプレス。
そして背後からはレバンドフスキが全力のプレスバック。
ここでボールを奪い、再び攻撃したいバイエルン。
しかしユベントスにも絶対的な個の力が存在した。
*8500万ポンドの価値
ポグバに対し、激しく寄せるラーム。
しかしポグバ。
長い左腕を伸展し、おそらく70cmの空間を作り出しプレッシャーを取り除く。
縦に出したいが味方へのパスコースが切られている事と背後から迫るレバンドフスキの姿を確認したポグバ。
落ち着いてバルザーリにボールを下げ、攻撃を始めるユベントス。
1人でボールを奪い、1人でプレスをいなし、1人で攻撃の機会を作るポグバ。
別のシーンをもう一つ。
左から右に攻めるユベントス。
前からのプレッシングで時間と余裕を奪うバイエルン。
バルザーリからパスを受けるポグバ。
攻める方向に背を向けるポグバに寄せるラームとボールサイドに圧縮し、近いパスコースから切っていくバイエルン守備陣。
ここで再び左手を伸ばし、強引にターンするポグバ。
一気に逆サイドへ展開。
ボールサイドへ圧縮していたバイエルンのプレッシングが空転させられる1シーン。
また序盤から強度の高いプレッシングを続けるバイエルンに対し、ユベントスは頭を超えていく大きいボールを蹴る事でプレスを回避していた。
もちろんターゲットは
ビッグスモールンかな??
身長差ありすぎワロタwwwwwwwwwwwww
左から右に攻めるユベントス
ボールを基準に絞る攻撃的なプレッシングのバイエルン。
(俯瞰的に見るとボールに寄っているのがわかりやすいですね)
クアドラードは必死にキープ、なんとかバックパスし、サイドを変える。
サイドを変えるユベントス
ボールを基準に横スライドするバイエルン。
快速を生かし、0距離まで寄せるロッベン。
しかし、ロッベンをものともせず、ゴリターンを見せるポグバ。
ポグバに伴いユベントスの前線も加速。
キミッヒを釣り出すようにディバラがサイドに流れ、球足の早いクロスをいれる。
しかしタイミングが合わず、アラバにクリアされてしまう。
ポグバの人外ターンからフィニッシュまで持っていくユベントス。
この日、ユベントスの遅攻はあまり練られていなかった。
それはバイエルンのプレッシングが強烈だった事も理由に挙げられるが、最後まで攻めきれず、中途半端な位置でボールを失う事を恐れていたからだとも思う。
それとは逆にカウンターとプレッシングは緻密なデザインされていた。
カウンターの発射台になっていたのはポール・ポグバである。
まずポグバが個でプレスを剥がす。
左サイドならばディバラ、右サイドならクアドラードがサイドに流れ、2対2を作って球足の早いクロスを入れる。
左右のサイドに違いはあれど、カウンターではこの形を作る。前半、ゴールネットを揺らす事はなかったが再現性の高いカウンターを何度か作り出していた。
更にアッレグリはカウンターの失敗に備え、毒を伏せていた。
左から右に攻めるユベントス
縦パスを受けたポグバを確認し、裏へ走り出すユベントスの前線。
昨季ならば、ここからピルロが精密なボールを送り出し、裏へ抜ける選手とGKが1 対1になるシーンを作りだしているだろう。
ただポグバは力強く前を向く力と推進力に秀でているが、ピルロのような繊細なキックは持ち合わせていないので、クアドラードへのパスはタッチラインを割ってしまう。
が、ここでアッレグリの毒が現れる。
スローインからプレッシング開始
細かく繋ぐとプレスの餌食にあうので、こういった策で陣地とボールを進める。
前線からのプレッシング×ポグバを起点にしたカウンター×10人での硬質なブロック形成の3点を軸に据える事で勝利を狙っていたアッレグリ。
1本のパスを得点に結びつけられるスナイパーのピルロがいなくなり、ポグバは絶対にボールを失わないという前提の上、設定されたカウンターだった。
カウンター以外での局面でも輝きを見せるポール・ポグバ。
・ロングボールのターゲット役
・相手のプレッシングを個で解決する役
・個でボールを略奪する役
と、これほどに何でも屋なのはポグバか星野源くらいのものである。
しかし、ポグバ以外がカウンターを仕掛けるとどうなってしまうのか。
*バイエルンの先制点を検証
左から右に攻めるユベントス。
しかしラーム、チアゴに横から挟まれ、正面からヴィダルが迎撃、ボールを奪う。
ボールを奪ったヴィダルからミュラーへ、ミュラーからロッベンに繋ぐ。
ここはエブラへの壁になる事で、ロッベンに余裕を持った状態でボールを貰わせるレバンドフスキの献身性が涙を誘いますね。
45度でボールを持つロッベン。この状況は非常に危険。
ここでの問題はユベントス守備陣がボールより前に4人しかいない事。
(味方の戻りを促すボヌッチが危険性を表してますね)
ここからロッベンはクロスを上げ、ドウグラスコスタが中央に折り返し、ミュラーが冷静に流し込んでバイエルンが待望の先制点を挙げる。
ペップバイエルンではお馴染みのWGからWGへのパス交換。
SBの外側、いわゆる大外と呼ばれるスペース同士のパスがどうして危険なのか。
(DF側の立場で言うと)
・DFはクロッサーに視野を固定されてしまう。
・視野を固定された逆SBの裏を誰もケアできない。
・パスが逆WGに渡ってしまうと視野と身体の向きを一度リセットし、ボールサイドに整えるのに時間が必要な上、クロッサーと守備側の動きを視界に収めながらパスを受ける選手に簡単に守備の穴を突かれてしまう。
この3点に尽きると個人的には思っています。
こんな暴力的オフェンスは世界でもナポレオンズしか守れないです。
首360度回りますからね。彼ら。
不況のせいで首が回らなそうそうですけども。笑
では立場を変えてOF側になってみましょう。
ロッベンがクロスを挙げる1秒前の写真。
ロッベンに対峙するエブラの脇にプレスバックするユベントスの選手が居るので、ロッベンの選択肢は自ずと縦を突破したクロスとなる。
クロスを上げるロッベンが狙うのは勿論、リヒトシュタイナーの両脇(赤丸)。
リヒトシュタイナーがボールサイドに絞るなら大外へ。
大外をケアするなら中央へクロスを上げるという算段だろう。
クロスを受ける側のドウグラスコスタでも同じ事が言える。
ボールサイドか外側のどちらか、リヒトシュタイナーがケア出来ない方へ走り込めば上質なクロスがやってくる。後出しジャンケンと同じ理屈ですね。
極端な話、ユベントスはこの状況を作られた時点で詰みなのです。
クアドラードが超頑張って中央のスペースを埋めて、リヒトシュタイナーに大外をケアさせればクロスは防げそうですけど、セカンドボールを絶対に拾われてしまうので、ミドルシュートをブッフォンに止めてもらうしか防ぐ方法はなさそうですね。
ただこの失点はユベントスの対応が悪いという訳ではなく、どうしようもないもので4バックの構造的な弱点(大外)を突かれた形の失点だと思います。
バイエルンに限らず世界的に主流の4バックの弱点を突くチームは日に日に増えてきています。ただこの大外→大外アタック、ブンデスの諸チームでは既に対策を見出してきているんですよね。
・もしキエッリーニがいたら
それが、こうです。
WGはSB(WB)がマンマークし大外を潰す。
PA内はCBを3枚並べ、ニア、中央、ファーを潰す。
これで大外へのルートを閉じ、単純なクロスも跳ね返せるってやりかたです。
バスケットボールの守り方「トライアングル&ツー」に発想が非常に似ているので気になった方は是非調べてみてください。
スラムダンクの湘北対海南の試合にも出てきますから。確か。
思えば、メッシの宇宙人サイドチェンジに沈んだ昨季のCLファイナルでも
「クッ・・・キエッリーニさえいれば・・・」と思ったユベントスファンも多いことでしょう。2nd legには間に合うそうなので、アッレグリの逆襲が楽しみです。
バイエルンが先制点を挙げ、前半が終了。
*後半
バイエルンは交代無しで後半が始まります。
1点を失ったユベントスは前半よりプレッシングの色を濃くさせます。
前半よりもボールを握る時間帯が増え、SBを使った有機的な攻撃を増やしていくユベントス。ただ、SBを上げるという事は後方のスペースを空けるのと同意語。
54’分、ユベントスはリヒトシュタイナー、エブラを高い位置まで上げた状態からクロスを上げ、跳ね返されたボールから高速カウンターで失点してしまう。
あの形まで持ち込まれてしまうとDFは外れるのを願うしか無い。
ロッベンのあれ、ズルいよなぁ・・・
62'分、丁寧に繋ぎ続けたユベントスが反撃の狼煙を上げる。
右から左に攻めるユベントス
GKからビルドアップしていく。
バイエルンのプレッシングを1枚ずつ剥がし、クアドラードがサイドで前を向く事に成功する。走り込むのはディバラとマンジュキッチ。
前半のポグバ同様、高速クロスを送り込むクアドラード。
ここでキミッヒがクリアミス。ボールはマンジュキッチの足下へ。
マンジュキッチからディバラへの優しいパスが通り、1対1を制したディバラがCL初得点を記録。沸き上がるユベントススタジアム。
球足が早くてバウンドの短いボールってコントロールしにくいので、直接通らなくてもこういったDFのミスが誘発されやすいので、非常に効果的ですよね。
19歳のキミッヒ、繋ごうとした若さが出てしまった1シーン。
これを糧に偉大な選手になってほしいものです
1−2、押せ押せのイタリアの巨人達。
こうなると精力的なプレッシングが途端に機能しだすのがフットボールの面白い所で、バイエルンの選手達は前半にはまるで無かったミスを連発。
少しずつノイアーを脅かすシーンも現れ始める。
しかし僕にはかえって危険な状況に見えました。
左から右に攻めるバイエルン
アラバとヴィダルの横パス交換を見ていられないケディラが2列目から加勢し、バイエルンにプレッシャーを与え始める。
一時的に4-3-3の様な形になる。
スタジアムの雰囲気に舞い上がり、おそらくアドリブ的に前へ出るケディラ。
ポッカリ空いた穴をラームは見逃さない。
FW-MF間に巧みにポジショニング。
ケディラのスペースに顔を覗かせるベルナトに繋ぐラーム。
ここでベルナトがエントレリネアスに成功。
背走状態になり一気にラインを下げられてしまうユベントス。
というように、このシーンに限った事ではなく、前から当たりに行く事でユベントスは前半にはなかったFW-MF間、MF-DF間のスペースを使われる局面が増えていきます。
負けている以上、前から仕掛けたい気持ちはわかりますがバイエルン相手にこのスペースを空けてしまうようでは本末転倒では?なんて気がしていました。
ただユベントスが動いた事で、第3者として見ている分にはかなり面白い展開に。
バイエルンが空き出したスペースを攻略し、3点目を上げるのが先か。
ユベントスがプレッシングからカウンターを発動させ、2点目を取るのが先か。
その答えは後者でした 。
左から右に攻めるバイエルン
GKノイアーからラームへの大きく蹴ったボールにポグバが反応。
高い位置でボールを奪う事に成功。
ファール覚悟で止めにかかるミュラーを逆に吹っ飛ばすポグバ。
中のマンジュキッチに繋いで、外のモラタに叩く。
モラタは頭で折り返し、走り込んできたストゥラーロが豪快なシュート。
ポグバ→マンジュキッチ→モラタ→ストゥラーロの外→中→外→中と視野をリセットリセットしまくる浮き球の連続パスでユベントスが魂の同点弾を叩き込む。
交代で出てきたモラタとストゥラーロがキッチリと結果を残す。
アッレグリ伯爵、恐ろしや。
己の見る目の無さと逆フラグ能力に涙を流していたら、試合が終了。
FT Juventus 2-2 Bayern Munchen
*感想
選手の力量、監督の采配、スタジアムの雰囲気と、どれをとっても非常にハイレベルで何度も見たくなるような試合でした。
マーティン・ア◯キンソンには荷が重そうだったので代わって上げてほしい。
リッツォーリさんとかに。
また、これからは自分達の絶対的なフットボールの形を持つチームよりも複数の引き出し、相手に合わせられる柔軟性の高いチームが強くなるんだろうなとも思いました。
ポゼッションもカウンターもプレッシングもリトリートも高いレベルで持ち合わせていないと、4傑にはなれない。8までならくじ運が良ければいけるけども。
それを没個性と言うか。時代の流れと捉えるか。
どの面をとっても90点、なおかつ得意な面では120点の力が出せるような総合力+αを持つ組織がCLのビッグイヤーを手にするんだなと思います。
個人的にはブレンダン・ロジャーズのスウォンジーとかアレクサンダー・ツォルニガーのシュツットガルトみたいなチームが好きなので、そういったチームが頑張ってこの舞台に登場してほしいと思ってしまいますね。。
1点集中型のチームは淘汰されていくと思うとちょっと寂しいよね。
そんな懐古主義で時代遅れ監督クラスタはパコ・へメスのラージョ、エディ・ハウのボーンマスに期待しましょう。
期待には答えてくれなそうですけどね。笑
それでは、また(西岡 明彦スマイル)